「インオアユー」とナースリーのコラボレーションができるまで #art03

障がいのある方たちが創り出す魅力的なアート。
”たすけてあげる”ではなく「すてきだなと思ったアイテムにたまたま障がいのある方がかかわった」という自然な需要と供給を成立させてくれます。
障がいのある人と社会をつなぐ、新しいきっかけのひとつになれば嬉しい、そんなコラボレーションの開発秘話第3弾をお届けします。
アトリエ訪問のつづき —— 新作・野菜シリーズのイラストを見せてもらいました
前回は、瑠那子さんのイラスト制作風景や、制作活動に対するご家族の思いをお届けしました。
実際に制作現場に立ち会ったのですが、描かれたたくさんの作品を前にスタッフ一同大盛り上がり!
「野菜シリーズ」のイラストは、見れば見るほど発見があり、まるでクイズ大会のような楽しい時間になりました。
- イラストはたくさん描いているんですよ。
- (イラストを指さしながら)この描き方、すごくいいですね…ハンカチにしたら絶対かわいい!
- 最初はアスパラみたいだったんですけど、だんだん描くスピードが上がるにつれて少しずつ変化していったんです。

- この一番後ろのは何ですか?
- ネギです。
- 一同:かわいい~!
- 実はネギはあまり描いてくれなくて…本人的にはあんまり面白くなかったのかも(笑)
- いやいや、かわいいのに!…あ、これもすごい!これは玉ねぎだ!
- 一同:かわいい!すごい!
- 描き始めたころは色を塗らないバージョンが多かったんですが、だんだん色がついてきて。その分ちょっと雑になってきたりして(笑)(イラストを指さしながら)これは、、(なんだっけ?)
- 瑠那子さん:トマト!
- 一同:トマトか~!なるほど!
- (すぐに反応して)今のはすぐわかりましたよ(笑)
- うそ~(笑)
- これ、色使いがまた素敵ですね!
- 私はもう“ネギの時代”は終わったと思ってたんですけど(笑)
- (瑠那子さんが鼻歌を歌っている)
- これはキャベツです。
- タッチが全然違いますね。
- 柔らかい感じが出てますね。
- キャベツは色のつけ方がわからなくなっちゃって…これは玉ねぎで、これは…
- 当てっこしましょう!
- せーの!
- 一同:(悩む時間)

- 僕は…さやえんどうですかね…?
- 皮を剥いて食べるやつだ!
- 一同:(盛り上がりながら)「たけのこ!」「とうもろこし?」
★正解は…たけのこ!
- 最初は円錐形のたけのこだったんですが、描くうちに段々下の方が太くなってきて、形が変わってきたんです。
こうしてイラストを囲んでわいわい盛り上がる時間は、瑠那子さんの作品ならではの魅力でもあります。
誰もが思わず笑顔になるイラストは、このイコールボート企画チームの打合せをいつでも楽しいひとときにしてくれます。

いよいよ完成!カーディガンのサンプルが登場
瑠那子さんのイラストを活かして完成したアイテム「カーディガン」のサンプルを、いよいよみんなでチェック!
試着をしながら、素材や刺繍へのこだわりまで開発の裏話も飛び出しました。
- カーディガンのサンプルを持ってきました!
- 刺繍は5種類あって、どの柄が届くかはランダムなんです。
- “選ぶ”というより、“届いた子との出会いを楽しんでください”というイメージで。多様性というテーマも込めてます。
- 細かい刺繍ですね。とても繊細!
- チャームよりもずっと細かいですね。
- 中山さんが何度『もう無理ですよ〜』って言っていたか(笑)
- 着てみてもいいですか?(サンプルを羽織りながら)わあ、柔らかくて素敵!
- 少しドロップショルダーにしてるので、ゆるっと着やすくしています。
- すごくいい!色もシックでおしゃれですね。
- スクラブとコーディネートできる色展開にしました。医療現場でも私服でも着られるように、落ち着いた色合いにしています。
- 私服としても全然いけますね。かわいい!
- 素材は何ですか?
- 綿アクリルです。
- 医療の現場で使う前提の作りなんですね?
- そうなんです。リブはあまりきつくせず、洗濯しやすい仕様にしています。医療現場は匂いがつきやすいので、イージーケアもポイントにしました。

- (何度も)かわいい~!
- ようやくかたちになりました!
- 刺繍もひとつひとつ可愛いですね。
- 刺繍が大きすぎると着づらくなるので、なるべく小さめに仕上げてもらいました。中山さんは大変だったと思いますが(笑)
- 知り合いの整骨院ではINORUのスクラブを着てるそうです。
- 次はカーディガンも着てもらわないとですね(笑)
- 整骨院の方はスクラブのブルーを着てましたよ。
- ブルーとチャコールグレーが人気なんです。
- 清潔感があって良い色ですね。
刺繍のひとつひとつに込められたこだわり、現場で使うからこその工夫。
実際に手に取ると、想像以上に着やすく、可愛く、そしてナチュラルに日常に馴染む仕上がりとなりました。

誌面・商品ラインナップの企画も盛り上がり中!
コラボ全体の誌面づくりやラインナップの広がりについて、さらに打合せが進行中!
制作の裏側では、まだまだ熱い議論が続いています。
- こんな感じの誌面にしようと思ってます。
- わあ…感動です!
- すごいですね!
- 嬉しいですね。アート(hitohako)の提案もさせてもらいました。
- 病院の受付などにアートを置くのもいいですよね。明るくなると思います。たくさんある中から候補を絞って、並べながら選んでいきました。
- さっきの“野菜シリーズ”も新たに追加してもいいですね!
- 野菜シリーズいけそうですね!
- 瑠那子さんセットみたいにしても面白いかも!
- 届くまでどれが来るかわからないようにしても楽しいですね。
- イラストをマルチクロスにして病室に飾るのもいいですよね。
- それもいいですね。ポストカードも原画がどんどん増えて、掲載する商品として選ぶのが大変で…中山さんから『まだですか?』って督促されました(笑)
- 組み合わせ次第で、見え方がガラッと変わりますから、選ぶのが大変ですよね。アートもたくさんあるし。
- 縦・横のバランスやタッチの違いを入れて、自由に選べるようにしました。
- 自由に選べるセットっていいですね。病院や医療現場にこういうアートがあるって、今まで考えてなかったけど、説明を聞くと『ああ、いいな』って思います。
- 病院の受付にぬいぐるみが置いてあるのは目にしますが、もっとアートを身近にできたら面白いですよね。今はアートを飾る病院も増えているんです。
広がる反響と、さらに新しいアイデアも
- こうして全国の方に使っていただける機会があるのが本当に嬉しいですね。カタログを見た市役所の方や保健師さんたちも声をかけてくださるんです。
- 反応をもらえると私たちも嬉しいです。ナースリーとしても良い取り組みになりました。
- 最初に瑠那子さんの作品を選んでいただけたのも良かったです。いろんな絵があるので、プロの目で商品へアレンジしてもらえるのはありがたいですね。
- 先ほどのhitohakoも、看護師さんがポケットの中身を移し替えてロッカーに置く箱として使えると思って。
- なるほど!
- 以前描いていただいたラグビー選手の絵も、hitohakoに入れて会社と家に飾ってるんです(笑)
- 絵はハガキサイズでしたね。(hitohakoに)ぴったり入る。
- そうやって楽しんでもらえるのが一番嬉しいです。
- アートが生活に自然に溶け込んで広がっていくのが理想ですね。ポストカードやペンケースも、シーズンごとにアーティストを変えて展開していくのも楽しそうです。
- このペンケースの形、私たちは馴染みがなくて…
- ポケットに入れるもの?
- そうです。インク漏れ防止のためのケースです。前回伺った際のインタビューやアトリエ見学で着想を得ました。ペンがスッと入るように薄く設計しています。
- ステッチの色も可愛いですね。配色も素敵。
- 配色もアーティストの方に決めていただきました。
- 3パターン選ぶのって大変ですよね。(ペンケースは3柄展開)
- そうなんです。私も上田さんに『まだですか?』って連絡してしまいました(笑)
- 本当にいろんな絵があるので、組み合わせ方で全然雰囲気が変わりますね。
- 世界観がボーダーレスで合ってますよね。
- “福祉アートだから”と構えず、自然に可愛いから買ってくれる方が多いのも嬉しいです。看護師さんたちも、商品に同梱している下げ札のカードを見てからその背景に気づいてくださったりして!
- その下げ札、捨てられないですね。名刺代わりに取っておきたくなる可愛さです。
- るうさん、今日はナースリーの靴下を履いてきてますよ。
- (現場がさらに盛り上がる)

こうしてアイテムも少しずつ広がり、アートが自然に医療現場や日常の中に溶け込んでいく形ができあがってきています。
アーティストとご家族、アストルテスタッフ、企画チーム、それぞれの視点からのアイデアが掛け合わせながら進んでいくコラボレーション。
次回はどんな話がでてくるか、どうぞお楽しみに!

店舗併設の就労支援施設。「ローププロダクト」「アクセサリー」「ファブリック」「刺し子」を軸とし、そのデザイン・生産・販売を手がけ、建物1Fのショップにてそれらを販売。
また就労支援事業所「ASUTORUTE(アストルテ)」の運営も行い、多くの方が製作の場で活躍しています。
「集中力」や「こだわり」などの特性を、細かな技術が要求されるクラフトやデザインに活かし、技術で自分の生活を確立できる場所です。