【第2回】観察・アセスメントのための「スケール」のつけ方・使い方/各論1.JCS(Japan coma scale、ジャパン・コーマ・スケール)/2.見てわかる・採点のポイント
執筆●佐野成美
聖路加国際病院 救命救急センター(救急看護認定看護師)
2.見てわかる・採点のポイント
①開眼しているかを見る
②開眼しているなら見当識を確認する
③開眼していなければ
1 . 声をかけてみる
2 . 大きく何度も呼んだり肩をたたいたり刺激を強くしてみる
3 . 強く呼んだり、さらに強い痛み刺激を与えてみる
④それでも開眼しなければ、痛み刺激に対する四肢の動きをみる
JCSでは以下の4つの反応をみるのが採点のポイントです。
①1桁か2桁か:開眼しているか? 自発的な開眼があるか?
②1桁内:見当識があるか?
③2桁内:声かけや痛み刺激に対する反応はどのようか?
④3桁内:声かけや痛み刺激に対する四肢の動きはどのようか?
①1桁か2桁か:開眼しているか? 自発的な開眼があるか?
開眼している状況であれば、そのままJCS「1桁」になります。
通常の状態で開眼していない、もしくは自発的な開眼がない場合は、
この時点でJCS「2桁」より悪い意識レベルとなります。
②1桁内:見当識があるか?
JCS「1桁」のなかでさらに3段階に評価するためには、ここでは見当識があるかどうかがポイントとなります。見当識とは、今いる場所や人、時を認識することを指し、図2のように質問します。
■図2 見当識を確認するときの質問例
判断ポイント 答えの正しさに加えて、反応もみる
質問に対して正しい返答をしてきても、何となくぼんやりと応えたり、言ったことをすぐ忘れたりしてしまうときは、意識清明とは言えません。
採点ポイント①
“見当識障害”の鑑別では、答えの正しさをみると同時に、ぼんやりしていないか、反応の速さもみる
●なんとくぼんやりして忘れてしまうときや、しばらく考えこむなどのときには「JCS=0」(意識清明)ではない
③2桁内:声かけや痛み刺激に対する反応はどのようか?
「刺激」に対しどのように患者が反応するかが評価のポイントとなります。
刺激はまず、患者のすぐ近くで名前を呼ぶなど、声をかけてみることから始めます(図3-①)。
そして肩を叩くなどの軽い刺激を加えながら、何度も声をかけてみます(図3-②)。
それでも反応がなければさらに刺激を強くしてみます(図3-③)。
このように、声をかけることから痛みを加えるところまで徐々に刺激を強くしていき、どの時点で覚醒するかを評価します。
もちろん、覚醒した時点で、それ以上の強い刺激を与えることはしません。
■図3 刺激を与える方法
判断ポイント 開眼しないまでも指示への反応がある場合は、反応の程度をみる
冒頭に示したように、何らかの理由で開眼しない場合でも、
簡単な指示に応じられるのであれば“意識はある程度保たれている”と判断しますが、JCSのスコアの何点に該当するか判断に迷う場合があります。
その場合、指示に対する反応の程度をみます。
指示にスムーズに応じられれば「JCS=10」、何度か促さないと応じなければ「JCS=20」、まったく指示に応じなければ「JCS=30より悪い」となります。
ここで、指示には従わないがかろうじて開眼するのであれば「JCS=30」となりますが、
開眼もなければ、「2桁」ではなく「3桁」の分類のどこかに相当することになります。
採点ポイント②
“開眼”しなくても簡単な指示にスムーズに応じられれば 、「JCS=10」となる
●“意識状態がある程度保たれている”と考える
④3桁内:声かけや痛み刺激に対する四肢の動きはどのようか?
図3の痛み刺激を与えても開眼がなければ、「刺激しても覚醒しない」JCS3桁のなかで評価します。
痛み刺激に対し少し手足を動かす、顔をしかめるといった四肢の反応は、「JCS=200」となります。
判断ポイント 異常肢位であれば「JCS=200」
JCS3桁の段階では、異常肢位(除皮質硬直〈図4-①〉、除脳硬直〈図4-②〉)がいずれも「JCS=200」となります。
除皮質硬直は大脳皮質や白質が広範囲に障害されたときに生じ、さらに障害が進行し脳幹部に及ぶと除脳硬直を生じます。
どちらも脳ヘルニアが切迫している危険な徴候です。
そのため、こうした異常肢位は着目すべき反応ですが、スコアの点数のみではわからないため、補足情報として記録に書き足すとよいでしょう。
■図4 異常肢位
採点ポイント③
異常肢位(除皮質硬直、除脳硬直)では「JCS=200」。
補足情報として肢位を書き込むとよい
●いずれも脳ヘルニアを示す危険な徴候
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