【第3回】観察・アセスメントのための「スケール」のつけ方・使い方/各論1.JCS(Japan coma scale、ジャパン・コーマ・スケール)/3.見てわかる・スケールを用いた アセスメントの進め方/4. 関連して知っておきたいこと


執筆●佐野成美
聖路加国際病院 救命救急センター(救急看護認定看護師)

3.見てわかる・スケールを用いたアセスメントの進め方

事例1

◎40代男性

◎駅のホームで倒れ込み、数分間意識消失していたため、駅員が救急車を要請した

◎病院に到着したときにはすでに症状はなく、自発開眼をしている状態であった



現在の状態


●倒れたときの記憶はあいまいだが、病院に搬送されたことや、自分の名前、生年月日、今日の日付などには正しく応答している

●ややぼんやりしており、応答するのに「えっと……」と考え込むこともあり、反応が遅い



JCS

採点とアセスメント → JCS=1

この患者は自発的に覚醒しており、周囲に対しても状況を認識しています。

意識消失していた間の記憶がないのは仕方ありませんが、見当識を問う質問への応答はでき、見当識はあると言えます。

しかし、質問に対する応答が遅かったり、何となくぼんやりとした印象を受けたりした場合完全に清明とは判断しがたく、「JCS=1」となります。

事例2

◎70代女性

◎脳梗塞の診断で入院が決定した



現在の状態


●病室に来たときの様子は、自発開眼はない状態

●肩を軽く叩き、普通の声で2回ほど名前を呼ぶと、すぐに開眼し、こちらを見た

●自分の名前を言えるが、日付は間違えていた

●こちらが挨拶をするとうなずいて、応答したが、少しするとまた目を閉じてしまう



JCS

採点とアセスメント → JCS=10

自発開眼はなく、刺激を加えることで開眼するのはJCS「2桁」の意識レベルです。また、刺激をしないと眠ってしまう状況もJCS「2桁」となります。

まず始めに声をかけますが、この患者は比較的スムーズに開眼してこちらをみるという反応を示しています。
刺激にすぐに覚醒して周りを認識するレベルであり、「JCS=10」となります。

もし、何度も声をかけたり肩を揺さぶったりしなければ開眼しない状況であったら「JCS=20」となります。
また胸骨に強い刺激を与えるなど、強い痛みにのみ開眼するのであれば「JCS=30」となります。

JCS「2桁」のなかでさらに3段階に評価するときは、刺激への反応の早さと、どの強さの刺激で開眼するのかが、評価の分かれ目となります。

事例3

◎50代男性。自宅で転倒し、頭部を強く打撲した

◎右急性硬膜下血腫の診断で入院

◎意識は清明で血腫量はわずかであり、保存的治療となっている



現在の状態


●夕方の検温時、患者は眠っているようだった

●症状を観察するため名前を呼んで起こしてみたが、開眼はない

●胸骨への強い刺激では、痛みの部分を払いのけるような動作しかしない



JCS

採点とアセスメント → JCS=100

胸骨への刺激や爪への刺激は、強い痛みを伴います。
それにもかかわらず開眼しないときはJCS「3桁」となり、意識レベルの重症度としてはより深刻です。

JCS「3桁」のなかで、さらに3段階の評価をするときには、痛み刺激に対し四肢がどのように動くかが、評価の分かれ目となります。
また顔をしかめる等表情の変化も一緒に観察します。

この患者は痛みを感じる部分に手を持っていき、痛みを排除しようとしています。
そのため「JCS=100」となります。

少し逃避する程度では「JCS=200」となり、四肢の動きもなく、表情もまったく反応しない状態が「JCS=300」です。

4.関連して知っておきたいこと

①呼吸・循環の評価も重要

意識障害は、生命の危機に直結する症状であることが多いです。
そのため必ず「呼吸」「脈拍」「血圧」「体温」もあわせて観察します。

また、頭蓋内病変や薬物による意識障害では、瞳孔所見にも異常をきたします。
そのため、「瞳孔の大きさ」「瞳孔不同の有無」「対光反射の有無」も確認します。



②原因別対応も想定しておく

意識障害の程度が重症であれば、舌根沈下や嘔吐物などによる気道閉塞、呼吸停止が起こることも予測され、吸引装置やバッグバルブマスク、酸素といった緊急蘇生処置の準備も必要です。

また、緊急事態が多いので、意識障害の原因を迅速に検索していくことが求められます。
意識障害の主な原因を「アイウエオチップス」と覚えておく方法があります(表2)。

■表2 アイウエオチップス


JCS

〈参考文献〉
1.日本救急看護学会 監修,日本救急看護学会教育委員会 編:ファーストエイド・すべての看護職のための緊急・応急処置(補訂版).へるす出版,東京,2013.
2.日本救急看護学会 監修:外傷初期看護ガイドライン―JNTEC(改訂第3版).へるす出版,東京,2014.

■関連記事はこちら

【第1回】観察・アセスメントのための「スケール」のつけ方・使い方/各論1.JCS(Japan coma scale、ジャパン・コーマ・スケール)/1.スケールの概要)

【第2回】観察・アセスメントのための「スケール」のつけ方・使い方/各論1.JCS(Japan coma scale、ジャパン・コーマ・スケール)/2.見てわかる・採点のポイント

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